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不確かな未来への賭け、そして物語

我々は日々、無意識のうちに数え切れないほどの選択をし、その結果に一喜一憂しながら生きている。朝、傘を持っていくかどうかという些細な決断から、進路や職業といった人生を左右する重大な決断まで、それらは全て、不確実な未来に対する一種の「賭け」と言えるかもしれない。そして、この不確実性に対する人間の欲求や興味が、古今東西、様々な形の娯楽を生み出してきた。その象徴的な存在の一つが、ブックメーカーと呼ばれる業態だろう。

確率と直感の狭間で

スポーツの試合や政治の行方、果ては芸術賞の受賞者に至るまで、あらゆる事象の結果を予想し、金銭を賭ける行為は、人類の歴史とともに古い。近代においてこの行為を体系化し、ビジネスとして成立させたのがブックメーカーである。彼らは膨大なデータと複雑な統計モデルを駆使してオッズ(確率)を設定し、リスクを管理する。一方、賭ける側である我々は、データ分析に加え、時に鋭い直感や深い洞察に頼って決断を下す。これは単なるギャンブルを超え、一種の知的遊戯、自己への挑戦という側面すら持っている。

映画が描く、人生という名の大勝負

この自己への挑戦、あるいは人生そのものの不確かさは、数多の物語の原動力となってきた。例えば、2021年に公開されたアニメーション映画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』では、秀才たちが繰り広げる知恵比べと恋愛駆け引きが描かれる。彼らは相手の心という最も予測不能な領域に対して、あらゆる策を講じる。それはまるで、ブックメーカーのように相手の次の一手を読もうとする行為そのものだ。物語の登場人物たちは、自らの感情というリスクと、相手の気持ちという不確実な未来に対して、全身全霊で「賭け」に出るのである。

情報化社会と変容する賭けの形

インターネットの普及は、ブックメーカーの姿を一変させた。従来の店舗型ではなく、オンラインで24時間、世界中のあらゆるイベントに賭けられる環境が整った。アクセスの容易さや選択肢の多様さは飛躍的に向上し、市場は巨大化している。しかしその一方で、その気軽さが依存症という新たな社会的課題を生み出していることも事実である。それは、技術の進歩が常に光と影の両面を持つことを如実に物語っている。

本質は変わらない人間の心理

プラットフォームがどう変化しようと、その根底にある人間の心理ーー予測したいという欲求、リスクを冒すことへの興奮、そして勝利による達成感ーーは不変である。古代の戦いにおいて策を練った将軍も、現代の投資マーケットで相場を読むトレーダーも、本質的には同じ衝動に駆られている。私たちは皆、多かれ少なかれ、人生という名の大きな賭け場に参加している。次の展開が読めないからこそ、物語は面白く、人生はドラマチックなのだ。

予測不能な時代を生き抜くために、我々は日々、僅かな情報と自身の経験則を手がかりに未来を読もうとする。その行為自体は、高度に計算されたオッズを提示するブックメーカーの仕事と地続きなのかもしれない。そして、その先にある結果が、思いもよらぬ結末へと我々を導く時、そこにはまた新たな物語が生まれるのである。

Luka Petrović

A Sarajevo native now calling Copenhagen home, Luka has photographed civil-engineering megaprojects, reviewed indie horror games, and investigated Balkan folk medicine. Holder of a double master’s in Urban Planning and Linguistics, he collects subway tickets and speaks five Slavic languages—plus Danish for pastry ordering.

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